「自主的にやれ」という命令。
「もっと自主的に仕事をしてください」
たまに、会社でこんなことを言われる。
言われたことだけやるな。
自分で考えろ。
仕事は自分から見つけろ。
なるほど。
「自主的にやれ」という命令。
自主性、開始0秒で死亡。
そもそも自主性とは、自分で考え、自分の判断で行動することではないのか。
それを、
「自主的にやれ!」
と他人から命令されて発動する自主性は、本当に自主性なのだろうか。
上司に「自主的に動け」と言われ、
「はい! 分かりました!」
と元気よく返事をして自主的に動き始める。
もう何が自主なのか分からない。
僕には、リードをつけられた犬が、
「自由に走ってこい!」
と言われているように見える。
走れる範囲は、リードの長さまでだ。
仕事は自分で見つけるものらしい
「言われたことだけやるな。仕事は自分から見つけろ」
これも、よく考えると不思議な言葉だ。
もちろん、自分で気づいて動くこと自体を否定したいわけではない。
目の前にゴミが落ちていたら拾う。
困っている人がいたら手伝う。
もっと効率のいい方法を思いついたら提案する。
いいと思う。
問題は、それが、
「自分から仕事を見つけなければならない」
という義務に変わったときだ。
仕事が終わった。
普通なら、
「終わりました」
である。
ところが、優秀な労働者は違うらしい。
仕事が終わる。
新しい仕事を探す。
終わる。
また探す。
終わる。
また探す。
無限湧きである。
倒しても倒しても敵が出てくるゲームみたいだ。
しかも自分で敵を探しに行かなければならない。
なんというクソゲーだろう。
一方、最初に与えられた仕事をゆっくりやっている人は、
「まだやってます」
で済む。
仕事が早い人は仕事が増える。
仕事が遅い人は仕事が増えない。
これでは、
仕事ができる人への報酬が、仕事。
になってしまう。
いらない。
現金でください。
では、管理する人は何をするのか
そもそも、仕事を適切に用意して、人に割り振ることも管理する側の仕事ではないのだろうか。
今日やるべき仕事は何か。
誰が何を担当するのか。
どこまで終わればいいのか。
優先順位は何か。
そういうものをある程度設計したうえで、
「ここから先は自分で判断していいですよ」
なら分かる。
でも、
「仕事は自分で見つけろ」
だけで終わると、
仕事を与える仕事まで、こっちの仕事になっている。
僕はいつの間に管理職になったのだろう。
給料を確認する。
なっていなかった。
自主的に動いたら怒られる
そして「自主的に動け」の最大の謎がこれだ。
本当に自主的に動くと、
怒られることがある。
「言われたことだけやるな。自分で考えろ!」
分かりました。
自分で考えて、やり方を変えてみた。
「勝手なことするな!」
困った。
では別の日。
勝手なことをしないように待っていた。
「指示を待つな!」
困った。
どうやら正解は、
「勝手に動くな。ただし、指示される前に動け」
らしい。
かなり難易度が高い。
つまり求められているのは「自主性」ではない。
上司の頭の中を読み、
上司が次に言おうとしていることを予測し、
それを上司が口にする0.5秒前に実行する能力である。
自主性というより、予知能力だ。
会社は社員研修より、超能力開発セミナーを開催した方がいい。
「自分で考えろ」の正解は決まっている
結局、
「自分で考えろ」
と言いながら、実際には「何を考えてもいい」わけではない。
会社が期待する答えが、すでにどこかにある。
もっと効率よく働こう。
もっと仕事を探そう。
もっと会社の役に立とう。
そこへ自力で辿り着くことが「自主性」と呼ばれる。
でも、本当に自分で考えた結果、
「今日は十分働いたから、もういいだろう」
となるかもしれない。
「この仕事、そもそも必要?」
となるかもしれない。
「これをやめた方が効率いいのでは?」
となるかもしれない。
なんなら、
「働きたくない」
に辿り着く可能性だってある。
それも自分で考えた結果である。
でも、たぶん評価はされない。
「素晴らしい自主性ですね!」
とはならない。
なぜだ。
自主性は、会社の所有物ではない
自主性を本当に大切にするなら、会社にとって都合の悪い自主性も、ある程度は受け入れなければならないと思う。
自分で考えるというのは、必ずしも誰かが期待した答えに辿り着くことではない。
「違うと思います」
と言うことも自主性だ。
「それ、やる意味あります?」
と聞くことも自主性だ。
誰も疑わず続けている仕事を、
「これ、やめません?」
と言うことだってそうだ。
なのに、
「自主的に動いてほしい。ただし、こちらが望む方向に」
となった瞬間、それはもう自主性ではない。
命令を、命令される前に実行してほしいだけだ。
それなら最初から言ってくれた方が早い。
僕も楽だ。
だから、自分で考えてみた
「言われたことだけやるな。自分で考えろ」
そう言われた。
せっかくなので、本当に自分で考えてみることにした。
しばらく考えた。
そして、一つの結論に辿り着いた。
何もしないことにした。
言われていた仕事は、全部鞄に詰めた。
自主的な、怒りが聞こえる。
僕は、無意識にそれを無視した。
窓の外が見たい。
空は、とっても綺麗だ。
久しぶりに、旅をした。
