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電車や職場にいる香水くさすぎる人。なぜ?吐きそうだ。

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秋になった。

ついこの間まで、あれほど暑かったというのに、朝晩はすっかり涼しくなった。

空は高く、風は心地よい。

夏の間、あれほど騒がしかった蝉たちも、いつの間にか姿を消している。

僕は秋が好きだ。

暑くもなく、寒くもない。少し冷たくなった風が頬を撫でる。

何より、秋には秋の匂いがある。

これを言うと、よくわからないという人もいるのだが、僕には確かに感じられる。

夏の夕立のあと、アスファルトから立ち上る匂い。

冬の朝、冷たく澄んだ空気の匂い。

春の訪れを知らせる、どこか柔らかな匂い。

そして、秋の匂い。

どこか懐かしく、少し寂しい。

僕はこの匂いが好きだった。

その日も、いつものように出勤していた。

駅へ向かう道を歩きながら、僕は大きく息を吸い込んだ。

ああ、いい季節になった。

なんて素晴らしい朝なのだろう。

こんな日は、いつもより少しだけ足取りも軽くなる。

仕事に行くことさえ、悪くないと思えてくる。

まあ、それは言いすぎかもしれない。

しかし、それくらい気分がよかった。

僕は駅に到着し、改札を抜け、ホームへ向かった。

やがて電車が滑り込んでくる。

いつもの電車だ。

扉が開いた。

僕は何も考えずに乗り込んだ。

その瞬間だった。

くっさ!!!!

なんだ。

何が起きた。

僕は思わず顔をしかめた。

鼻の奥に、強烈な匂いが突き刺さってきたのだ。

甘い。

いや、甘すぎる。

花のような、果物のような、何かよくわからない匂い。

とにかく濃い。

濃すぎる。

さっきまで感じていた秋の匂いが、一瞬にして消え去った。

なんということだ。

僕の秋が奪われた。

周囲を見渡す。

どうやら、誰かの香水らしい。

しかし、いくらなんでも強すぎないか。

一体、どれほど振りかければ、こんなことになるのだろう。

香水瓶の中に落ちたのか。

それとも、浴槽いっぱいに香水を張って入浴してきたのか。

まさか、シャワーから香水が出てくる家に住んでいるのだろうか。

そんな家があるなら、一度見学してみたい。

いや、やっぱり遠慮しておこう。

僕はそっと鼻を押さえた。

しかし、匂いは容赦なく襲ってくる。

そして、気づいてしまった。

し、しかも……同じ車両だと。

なんということだ。

これからしばらく、この匂いと一緒に出勤しなければならない。

僕はただ、電車に乗りたかっただけなのだ。

なぜ、朝から鼻の穴を攻撃されなければならないのだろう。

窓の外には、穏やかな秋の景色が広がっていた。

しかし、車内は違った。

ここだけ季節が香水になっている。

僕は静かに目を閉じた。

秋の匂いを思い出そうとした。

無理だった。

秋が完全に負けていた。

目次

僕は匂いに敏感なのだ

そう。

僕は匂いに敏感なのだ。

昔から、ちょっとした匂いの違いが気になる。

季節の匂いもそうだし、雨が降る前の空気もそうだ。

誰かが料理をしていれば、遠くからでも気づくことがある。

いい匂いには、思わず振り返ってしまう。

しかし、当然ながら、いいことばかりではない。

嫌な匂いにも敏感なのだ。

特に、強烈な香水。

あれは本当に勘弁してほしい。

もちろん、匂いの感じ方には個人差がある。

僕が苦手な香りを、好きだという人もいるだろう。

それはわかっている。

しかし、好き嫌い以前に、あまりにも強烈な匂いというものが存在する。

その人が近づいてくるだけで、周囲の空気が変わる。

もはや、その人から香りがするのではない。

香りの中に、その人が存在しているのだ。

主役が逆転している。

一体、どちらが本体なのだろう。

人間か。

香水か。

僕にはもうわからない。

しかも、強い香りを嗅ぎ続けていると、気分が悪くなることがある。

ひどいときには吐き気さえ感じる。

決して大げさに言っているつもりはない。

本当に苦手なのだ。

だからこそ、僕は電車の中で考えていた。

なぜだ。

なぜ、あんなに香水をつける必要があるのだ。

おしゃれなのはわかる。

身だしなみを整えたい気持ちもわかる。

しかし、限度というものがあるだろう。

お前は一体、何と戦うためにそんなに香水をまとっているんだ。

蚊か。

悪霊か。

それとも、これから香水売り場の宣伝部長にでも就任するのか。

僕はもう、早く電車を降りたかった。

次の駅。

まだ降りない。

その次の駅。

まだ降りない。

頼む。

そろそろ降りてくれ。

もちろん、誰が香水の持ち主なのか、はっきりわかっているわけではない。

だから、誰か一人をじっと見つめるわけにもいかない。

ただ、車内に漂う強烈な香りだけは確かに存在していた。

僕は時計を見た。

まだまだ先は長い。

絶望した。

やっと職場に着いたと思ったら

ふーっ。

やっと職場に着いた。

まったく、酷い目に遭った。

電車を降り、駅の外へ出た瞬間、僕はようやく息をつくことができた。

ああ。

空気がおいしい。

こんなに空気がおいしいと感じたのは、いつ以来だろう。

僕は別に、山奥の秘境から帰還したわけではない。

ただ電車に乗っていただけだ。

それなのに、まるで長い旅を終えたような気分だった。

しかし、もう大丈夫。

あの香水ともお別れだ。

僕は職場に到着し、いつものように仕事の準備を始めた。

今日も一日、頑張ろう。

そう思った、そのときだった。

……ん?

なんだ。

この匂いは。

どこかで嗅いだような。

いや、まさか。

僕は恐る恐る顔を上げた。

そこには、職場の同僚がいた。

くっさ!!!!

お前もか。

なんでやねん。

電車で散々苦しめられたというのに、職場でも香水攻撃を受けるとは。

僕は一体、何をしたというのだ。

前世で香水工場でも爆破したのだろうか。

しかも、職場の場合はさらに厄介である。

電車なら、最悪、別の車両に移動すればいい。

次の駅で降りることだってできる。

しかし、職場はどうだ。

仕事がある。

同じ空間で働かなければならない。

嫌だからといって、勝手に帰るわけにもいかない。

そして、香水の匂いが強い人には、ある特徴がある。

本人より先に、匂いが到着するのだ。

まだ姿は見えない。

しかし、わかる。

来た。

あいつだ。

廊下の向こうから、強烈な香りが漂ってくる。

僕は顔を上げる。

数秒後、その人物が現れる。

なんだ、この登場演出は。

映画のラスボスか。

本人が登場する前に、周囲の空気が変わっている。

しかも、通り過ぎたあとまで匂いが残ることがある。

本人はもういない。

しかし、存在感だけは残っている。

残り香で出勤管理ができそうだ。

「あ、今日はもう来てるな」

姿を見なくてもわかる。

なんという便利な機能だろう。

いや、便利ではない。

まったく便利ではない。

僕はただ、普通に仕事がしたいのだ。

なぜ、職場にまで香水の存在を主張されなければならないのだろう。

そもそも、なぜ香水をつけすぎる人がいるのか

ここで、僕は考えた。

なぜ、あんなに香水をつける人がいるのだろう。

本人は気づいていないのか。

それとも、わかっていてつけているのか。

調べたり考えたりしてみると、いくつか理由がありそうだ。

① 自分の香水の匂いに慣れている

まず考えられるのが、嗅覚の慣れだ。

同じ匂いを嗅ぎ続けていると、次第に感じにくくなることがある。

これは嗅覚の順応と呼ばれる現象だ。

例えば、自分の部屋の匂いは普段あまり気にならない。

しかし、旅行から帰ってきたときなどに、ふと自分の部屋の匂いを感じることがある。

香水も同じなのかもしれない。

毎日使っているうちに、自分では香りを感じにくくなる。

すると、こう考える。

「あれ? 今日はあんまり匂わないな」

そして、もう一回。

さらに、もう一回。

結果、周囲の人間だけが強烈な香りを浴びることになる。

本人の鼻は慣れているのに、僕の鼻は初対面なのだ。

初対面で、いきなり全力で抱きついてこないでほしい。

もう少し距離感というものを考えていただきたい。

② 自分の好きな香りは、他人も好きだと思っている

これもあると思う。

自分にとっては、とてもいい匂いなのだろう。

お気に入りの香水。

高かったかもしれない。

誰かに褒められたこともあるのかもしれない。

しかし、忘れてはいけないことがある。

自分が好きな匂いを、他人も好きだとは限らない。

僕はコーヒーの香りが好きだ。

だからといって、電車の中でコーヒー豆を大量にばらまいたりはしない。

僕はラーメンも好きだ。

だからといって、隣に座った人の口にラーメンを流し込んだりはしない。

好きなものは、自分で楽しめばいい。

なぜ、周囲の人間にまで共有しようとするのだろう。

しかも、こちらは共有を希望していない。

僕の鼻の穴は、香水の試供品コーナーではないのだ。

③ 体臭を隠したい

体臭が気になる。

汗の匂いが心配だ。

そういう理由で香水を使う人もいるだろう。

気持ちはわかる。

誰だって、周囲から臭いと思われたくはない。

しかし、ここには落とし穴がある。

体臭を隠そうとして、香水を大量につけてしまう。

結果、別の意味で匂いが強くなる。

しかも、香水を重ねれば必ず体臭が消えるというわけでもない。

汗や皮脂などの匂いと混ざり、かえって不快に感じられることもある。

体臭が気になるなら、まずは清潔な衣服や汗のケアなどを考えた方がいい場合もあるだろう。

香水は、あくまで香りを楽しむためのものだ。

臭いものを全部、別の強烈な匂いで上書きすれば解決するわけではない。

そんな理屈が通用するなら、部屋が散らかったときに、さらに大量の家具を置けば片付いたことになってしまう。

ならない。

むしろ悪化している。

④ 香りで自分を印象づけたい

香水は、自己表現の一つでもある。

服装や髪型と同じように、自分らしさを演出したいのかもしれない。

確かに、香りが印象に残ることはある。

すれ違った人の香りを、あとから思い出すことだってあるだろう。

しかし、何事にも程度というものがある。

印象に残りたい。

それはわかる。

でも、強烈な香水で記憶に残ることが、本当に望んでいた結果なのだろうか。

「あの人、どんな人だった?」

「めちゃくちゃ香水臭かった」

これでは、せっかくのおしゃれも台無しではないか。

顔も名前も覚えていない。

ただ、匂いだけは覚えている。

そんな自己紹介があってたまるか。

⑤ 誰も指摘してくれない

これも大きいと思う。

匂いの問題は、なかなか指摘しづらい。

「その服、似合ってますね」

これは言いやすい。

「髪切ったんですね」

これも言いやすい。

しかし、

「香水、臭すぎませんか?」

これは言いづらい。

特に職場ではそうだ。

毎日顔を合わせる相手なのだ。

人間関係が悪くなるかもしれない。

相手が傷つくかもしれない。

だから、何も言わずに我慢する。

そして本人は、誰からも指摘されないので、問題がないと思ってしまう。

こうして、強烈な香水が今日も職場を漂う。

誰も悪者になりたくない結果、全員の鼻が犠牲になるのだ。

なんという悲しい社会なのだろう。

香水そのものを否定しているわけではない

ここは誤解してほしくない。

僕は、香水そのものが嫌いなわけではない。

すれ違った人から、ふわっといい香りがする。

それは素敵なことだと思う。

清潔感があると感じることもある。

香りを楽しむ文化そのものを否定するつもりもない。

ただし、いい匂いにも限度がある。

どれほど好きな音楽でも、大音量で流されたらうるさい。

どれほどおいしい料理でも、無理やり大量に食べさせられたら苦痛だ。

香水も同じではないだろうか。

問題なのは香水ではなく、周囲への配慮がないほど強い香りなのだ。

自分の身体につけているから、周囲には関係ない。

そう考える人もいるかもしれない。

しかし、匂いは身体の周囲に広がる。

本人だけで完結するものではない。

電車も職場も、さまざまな人が利用する空間だ。

香りに敏感な人もいる。

頭痛や吐き気を感じる人もいる。

一方で、ほとんど気にならない人だっているだろう。

だからこそ、自分の感覚だけで判断しないことが大切なのだと思う。

僕が秋の匂いを好きなように、香水が好きな人もいる。

そのこと自体は、何も悪くない。

ただ、僕は秋の匂いを楽しむために、隣の人の鼻先へ落ち葉を押しつけたりはしない。

お互い、自分の好きな匂いは適度な距離感で楽しもうではないか。

匂いは、簡単に遮断できない

そもそも、匂いの何が厄介なのか。

それは、簡単に遮断できないことだ。

見たくないものなら、目を閉じればいい。

うるさい音なら、耳を塞ぐこともできる。

もちろん、それですべて解決するわけではない。

しかし、少なくとも自分である程度の対処はできる。

では、匂いはどうだ。

鼻を塞げばいいのか。

確かに、鼻を塞げば多少は防げるだろう。

しかし、問題がある。

息ができない。

いや、口で呼吸すればいいではないか。

そう思う人もいるだろう。

しかし、口で呼吸したところで、匂いを完全に避けられるわけではない。

そもそも、なぜ僕が呼吸方法を変更しなければならないのだ。

僕はただ、出勤したいだけなのだ。

潜水訓練を受けに来たわけではない。

それに、ずっと鼻をつまんで電車に乗っていたら、周囲から変な目で見られるだろう。

「あの人、何してるんだろう」

知らん。

僕だって知りたい。

なぜ、ただ電車に乗るだけで、鼻をつまんで耐えなければならないのか。

しかも、匂いは目に見えない。

どこからどこまで広がっているのかわからない。

音なら、ある程度は発生源がわかる。

しかし、香水はどうだ。

こっちから匂う。

いや、あっちか。

まさか、後ろか。

僕は車内で一人、見えない敵と戦っている。

なんという理不尽な戦いだろう。

電車や職場で香水が臭すぎるときの対処法

では、実際に強烈な香水に遭遇したとき、どうすればいいのだろう。

怒っているだけでは解決しない。

僕も、そろそろ大人らしく考えてみよう。

電車では距離を取る

もっとも現実的なのは、距離を取ることだ。

可能なら別の場所へ移動する。

次の駅で車両を変えるのも一つの方法だろう。

なるほど。

実に合理的だ。

しかし、満員電車ではどうすればいい。

右には人。

左にも人。

前にも後ろにも人。

移動する余地など、どこにもない。

壁をすり抜けろというのか。

僕は忍者ではない。

そもそも、なぜ香水の匂いを避けるために、こちらが移動しなければならないのだろう。

納得できない部分はある。

しかし、気分が悪くなるくらいなら、我慢せずに離れる方がいい。

残念ながら、それが現実的な対処法なのだろう。

マスクを着用する

マスクで匂いが多少和らぐこともある。

ただし、一般的なマスクで香水の匂いを完全に防げるわけではない。

僕としては、もう少し強力なものが欲しい。

いっそ、防毒マスクでも着用しようか。

朝の通勤電車。

スーツ姿の会社員。

制服姿の学生。

そして、防毒マスクを装着した僕。

……。

今度は僕が車内で一番迷惑な存在になりそうだ。

やめておこう。

職場では本人に伝える

職場の場合は、本人に伝えるという方法もある。

「香りに敏感で、少し気分が悪くなることがあるので、控えめにしていただけると助かります」

なるほど。

なんと丁寧な言い方だろう。

しかし、これがなかなか難しい。

相手が気を悪くするかもしれない。

そんなことを気にしすぎる必要はない、と言う人もいるだろう。

でも、毎日顔を合わせる相手なのだ。

できれば波風は立てたくない。

だから、言えない。

結果、今日も我慢する。

明日も我慢する。

そして明後日も。

気づけば、僕の方が香水に合わせて生活している。

なんということだ。

職場の主導権を、香水に握られてしまった。

上司に相談する

本人に直接言いづらい場合は、上司に相談する方法もある。

個人を責めるのではなく、強い香りで体調に影響が出ることを伝える。

必要なら、職場全体で香りへの配慮を共有してもらう。

これは現実的な方法だと思う。

香水だけではない。

柔軟剤や整髪料、芳香剤など、強い香りの原因はいろいろある。

特定の誰かを悪者にするのではなく、みんなが働きやすい環境を考えることが大切なのだろう。

……。

しかし、僕は思った。

もっと根本的な解決方法はないのだろうか。

電車に乗る前に、強烈な香水を防ぐことができればいいのではないか。

そして、ついに思いついた。

改札に匂いセンサーを設置してほしい

もう、駅の改札に設置してほしい。

匂いセンサーを。

空港の金属探知機のようなものだ。

乗客は全員、そのセンサーをくぐらなければならない。

適度な香りなら問題ない。

しかし、一定の基準を超える強烈な匂いを検知した瞬間、

ピーーーーーッ!!

警報が鳴り響く。

赤いランプが点滅する。

駅員が駆けつける。

「お客様、少々よろしいでしょうか」

「え? 何ですか?」

「香水の使用量が規定値を超えております」

「えっ?」

「本日のご乗車はお断りしております」

乗車不可だ。

なんと素晴らしい制度だろう。

これなら、電車の中で強烈な香水に苦しむ人も減るかもしれない。

ただし、問題もある。

香水以外の匂いはどうするのか。

柔軟剤は。

整髪料は。

焼き肉を食べたあとの服は。

ニンニク料理を食べた人は。

駅の改札で、あちこちから警報が鳴り響くかもしれない。

ピーッ!

ピーッ!

ピーッ!

もはや改札ではなく、火災報知器の展示会だ。

駅員も大変だろう。

「お客様、香水が強すぎます」

「お客様、ニンニクの匂いが強すぎます」

「お客様、焼き肉を食べてこられましたか?」

いちいち確認していたら、電車が出発してしまう。

それに、匂いの感じ方には個人差がある。

何を基準にするのか。

誰が判断するのか。

考えれば考えるほど、問題が出てくる。

しかし、僕は諦めたくなかった。

なぜなら、あの強烈な香水から解放されるかもしれないのだ。

僕は頭の中で、新しい改札の完成を思い描いた。

これで安心して出勤できる。

秋の匂いも楽しめる。

素晴らしい。

なんと素晴らしい未来なのだろう。

ところが、僕にも問題があった

そして、ある日の朝。

僕はいつものように駅へ向かった。

秋の涼しい風が頬を撫でる。

空は高く、どこまでも澄み渡っていた。

僕は大きく息を吸い込んだ。

ああ。

今日もいい季節だ。

駅に到着する。

改札には、ついに導入された匂いセンサーが設置されていた。

僕は誇らしい気持ちになった。

これこそ、僕が求めていたものだ。

これでもう、強烈な香水に苦しめられることはない。

僕は胸を張って、改札をくぐった。

その瞬間だった。

ピーーーーーッ!!

警報が鳴り響いた。

赤いランプが点滅する。

なんだ。

誰だ。

朝からそんなに香水を振りかけてきた迷惑な人間は。

僕は思わず振り返った。

しかし、後ろには誰もいなかった。

……ん?

駅員が駆けつけてきた。

「お客様、少々よろしいでしょうか」

「はい?」

「匂いの規定値を超えております」

「え?」

「本日のご乗車はお断りしております」

僕は驚いた。

「いやいや、ちょっと待ってください。僕は香水なんてつけていませんよ」

「はい。存じております」

「じゃあ、どうして?」

駅員は少し言いづらそうに口を開いた。

「お客様、その……」

「はい?」

「香水ではありません」

「……え?」

「体臭です」

……。

なんだと。

僕は恐る恐る、自分の脇に鼻を近づけた。

……。

くっさ!!!!

なんということだ。

あれほど他人の香水を批判していた僕が。

匂いセンサーの導入を熱烈に訴えていた僕が。

自分の提案した制度によって、電車への乗車を拒否されている。

僕は静かに改札をあとにした。

秋の涼しい風が吹いていた。

どこか懐かしい、季節の匂いがした。

いや、違う。

僕の匂いだった。

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