『星の王子さま』を読んで、たくさんの言葉に立ち止まった。
有名な「大切なものは目に見えない」だけではなく、子どもと大人の違い、誰かを大切にすること、時間を費やすこと、責任、規則、数字、そして世界の見え方について、短い言葉の中にいろいろな問いが隠されている。
今回は、その中でも特に心に残った言葉をまとめてみる。
1|大人は、見えているものだけを見てしまう
「大人というのは何もわかっていないから、子供の方はいつも説明しなければならなくてうんざりしてしまう。」
(p9より引用)
『星の王子さま』の最初から、大人への少し辛辣な目線がある。
大人は知識も経験もある。
でも、知っていることが多いからこそ、目の前のものを自分の知っている形に当てはめてしまうこともある。
分かっているつもりになるほど、見えなくなるものもある。
この作品は、そんな「大人の見方」を最初から疑っている。
2|箱の中にヒツジを見る
「これはヒツジの箱。きみのヒツジはこの中にいるよ。」
(p15より引用)
この場面がとても好きだった。
紙の上に描かれているのは箱だけ。
でも王子さまには、その中にヒツジが見える。
さらに、
「この箱がいいのはね、夜はこれがそのままヒツジの家になるってところだよ。」
(p20より引用)
と、そこからもう一つ物語が生まれる。
目に見えているものだけで世界を決めないこと。
想像すること。
『星の王子さま』の大事な部分が、この小さな箱の中にもう入っている気がした。
3|大人になると、見えなくなるものがある
「ぼくには箱の壁を透かして中のヒツジを見ることはできなかった。ぼくは少しだけ大人になっていたのかも知れない。ぼくだって歳を取ったんだ。」
(p26より引用)
大人になると、見えるものは増える。
でも、同時に見えなくなるものもある。
子どものころには自然にできた想像が、大人になると「そんなものはない」で終わってしまう。
知識を増やすことと、想像する力を失わないこと。
その両方を持っていたいと思わされる言葉だった。
4|星空が幸せになる理由
「もしも誰かが、何百万もの星の中のたった1つの星に咲く花を愛していたら、その人は星空を見るだけで幸せになれる。」
(p39より引用)
この言葉は、『星の王子さま』全体を通して好きな考え方の一つ。
星そのものは変わらない。
でも、そのどこかに大切な存在がいると思うだけで、空全体の意味が変わる。
大切なものが一つできると、そのものにつながる世界まで少しずつ特別になっていく。
5|愛していても、愛し方は分からない
「あの小細工の陰にかくれた優しさを察してやればよかった。(中略)でもぼくも若かったし、彼女の愛しかたがわからなかったんだ。」
(p46より引用)
王子さまはバラを嫌いだったわけではない。
むしろ大切だった。
でも、バラの不器用な愛し方を読み取ることができなかった。
愛することと、相手の愛を理解することは別なのだと思う。
旅をしたあとで、同じ過去を違う角度から見られるようになった王子さまの成長も感じる場面だった。
6|「持つ」とは、そのものの役に立つこと
「ぼくは花を一輪持っていて、毎日水をやります。(中略)こうして、ぼくは花や火山の役に立っている。」
(p69より引用)
星を数えて「自分のもの」だと言うビジネスマンと、バラに水をやる王子さま。
二人とも「持っている」と言うけれど、その意味はまったく違う。
王子さまにとって、持つことは所有することではない。
そのものの世話をし、そのものの役に立つこと。
何をどれだけ持っているかより、何のために自分が動いているのか。
この価値観がとても好きだった。
7|規則は、変わらなくていいのか
「惑星が年ごとに前より速く回るようになった。それでも規則は変わらない!」
(p73より引用)
状況は変わっている。
でも、規則だけは変わらない。
少し笑える場面なのに、妙に現実的でもある。
昔からそうだから。
決まりだから。
みんなそうしているから。
そういう理由だけで残っているものはないだろうか。
当たり前に見えるものほど、一度「なぜ?」と考えてみる。
王子さまの旅を読んでいると、そんな姿勢の大切さを感じる。
8|たくさんの中の一人が、たった一人になる
「きみがおれを飼い慣らしたら、おれときみは互いになくてはならない仲になる。きみはおれにとって世界でたった一人の人になるんだ。」
(p97より引用)
一番好きだったキツネとの場面。
出会ったばかりなら、お互いに大勢の中の一人でしかない。
でも、一緒に時間を過ごすことで、その人でなければならなくなる。
特別というものは、最初からそこにあるのではなく、関係の中で少しずつ生まれていくのかもしれない。
9|誰かを好きになると、景色まで変わる
「小麦は金色だから、おれは小麦を見るときみを思い出すようになる。小麦畑を渡る風を聞くのが好きになる……。」
(p99より引用)
この言葉は本当に好きだった。
それまでキツネにとって何の意味もなかった小麦畑。
でも王子さまと出会ったことで、王子さまの金色の髪を思い出すものになる。
誰かが大切になると、その人だけが特別になるのではない。
その人につながる景色や音や匂いまで特別になっていく。
人との出会いによって、世界の中に好きなものが増える。
とても美しい考え方だと思う。
10|時間を費やしたからこそ、特別になる
「きみがバラのために費やした時間の分だけ、バラはきみにとって大事なんだ。」
(p104より引用)
『星の王子さま』の中でも特に心に残った言葉。
特別だから大切にする。
それだけではない。
大切にして、時間を費やしてきたからこそ、特別になる。
水をやった時間。
話を聞いた時間。
面倒を見た時間。
そういう積み重ねが、「たくさんの中の一つ」を「自分にとってのたった一つ」に変えていく。
11|大切にすることには責任がある
「飼い慣らしたものには、いつだって、きみは責任がある。」
(p104より引用)
誰かと関係を結ぶことは、ただ楽しいことだけではない。
その存在を大切にすると決めたら、そこには責任が生まれる。
これはバラに水をやる王子さまの姿ともつながっている。
「大切だ」と思うだけではなく、そのために自分が何をするのか。
『星の王子さま』はそこまで含めて、関係を結ぶということを描いている。
12|大切なものは、心で見る
「ものは心で見る。肝心なことは目では見えない。」
(p104より引用)
あまりにも有名な言葉。
でも、実際に物語の中で読むと印象が変わった。
目に見えない大切なものというのは、何か曖昧で神秘的なものだけではない。
一緒に過ごした時間。
記憶。
関係。
責任。
その人にしか分からない物語。
そういうものが、目の前にあるものの意味を変えている。
だからこそ、目で見るだけでは足りないのだと思う。
13|自分が何を探しているのか
「子供だけが自分が何を探しているのか、知っているんだ。」
(p106より引用)
大人になると、判断の基準が増える。
役に立つか。
得なのか。
人からどう見えるか。
普通なのか。
そういう基準を覚えていくうちに、自分が本当に何を求めているのか分からなくなることがある。
何を探しているのか分からないまま、ただ忙しく走り続ける。
この言葉は、大人になった今だからこそ妙に響いた。
14|美しいものは、何かを隠している
「家でも、星でも、沙漠でも、きれいに見えるものは何かを隠しているからなんだ!」
(p111より引用)
砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているから。
家も、星も同じ。
目の前に見えているものの奥に、見えない何かがある。
それを知ったとき、同じ景色が以前とは違って見える。
『星の王子さま』は何度も、見えるものの奥を想像することを教えてくれる。
15|星は、人によって違うものになる
「人にとっての星の意味は、人ごとに違うだろ。(中略)きみだけが他の人たちのと違う星を持つ……。」
(p126より引用)
同じ夜空を見ても、見えているものは人によって違う。
王子さまにはバラがいる。
飛行士には王子さまがいる。
だから星は、ただの星ではなくなる。
物語の最後に向かって、この考え方がとても綺麗につながっていく。
そして王子さまは、飛行士にこんな贈り物を残す。
星を見るたびに、自分の笑い声を思い出せるようにする。
誰かがいなくなっても、その人によって変わった世界の見え方は残る。
それが、この物語の一番優しいところなのかもしれない。
『星の王子さま』の言葉は、読む年齢によって変わる
今回初めて『星の王子さま』を読んで、こんなにも心に残る言葉が多い作品だとは思っていなかった。
子どものころに読んでいたら、きっと違う言葉を選んでいたと思う。
今だから引っかかった言葉。
今だから意味が分かった言葉。
そして、今はまだ分からない言葉もあるのかもしれない。
何年か経って読み返したとき、同じ一文がまったく違って見える。
それも、この本の面白さなのだと思う。
星の意味が人によって違うように、言葉の意味も読む人によって違う。
だからこそ、『星の王子さま』は何度も読み返されてきたのかもしれない。
そして僕も、いつかもう一度読みたい。
そのとき、
今とは違う星が見えているのかもしれない。
